大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)1739号 判決

被告人 西沢新治郎 外一名

〔抄 録〕

A、B両弁護人の論旨第二点について。

原判決は、原判示第四の(二)として被告人三角が石川重一に対し行使の目的をもつて消印を除去した取引高税証紙或は収入印紙を原判示日時場所において原判示回数に亘り販売交付したという不正な印紙を交付した罪を認定判示している。而して、いわゆる不正使用罪が通常不正なる情を知つた者がその情を知らない者に対しその印紙の本来の効用に従つて呈示したり提出したりして使用することを要件とするのに反し、いわゆる交付罪は、その情を知つた者が同様その情を知つている者に対し更にその次の段階においてこれをその印紙本来の効用に従つた処分をすることを目的として引き渡すことを要件とするものと解するのが相当であるから、本件において右被告人の所為にして交付罪が成立するためには右相手方の石川においてその情を知つていなければならない筈である。然るに原判決は原審相被告人石川はその情を知らない者としてすべての起訴事実について無罪を言い渡しており、同一原判決において一方で措信しない証拠を他方で採用すること自体矛盾であるから、右原判示第四の(二)につき援用してある右石川の供述調書中その情を知つている趣旨の供述その他右石川の知情の証拠は措信するに足りないものとして捨てて採用しなかつたものといわなければならないのである。そうすれば原判決は右交付罪の成立には相手方の知情ということは必要でないと誤解して法令の適用をしたものと考えざるを得ない。本論旨においては被告人三角が石川に販売したのでなく同業者間の有無相通ずる趣旨における一時的な融通であることを前提として事を論じているのであるが、この点について検討するまでもなく原判決は右に述べたように法令の適用に誤がありこの誤は判決に影響を及ぼすこと明らかであるのみならず、前に説明したとおり印紙類を交付した右被告人自身も情を知らないことが明らかであるから、かりに本件石川に対する交付が不正印紙類の使用罪を構成する場合が考え得るとしてもその使用者となるべき被告人三角において右の情を知らない以上この犯罪の構成要件を具備しないことになるが故に原判決中右部分はこの点においても破棄を免れない。

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